Activities

March, 2015

 

フリーステイト大学での一年間

 

津田塾大学大学院

河野明佳

 

アパルトヘイト崩壊後の南アフリカ社会の中で、経済的にだけでなく、社会的、政治的に阻害され続けている人びとへの関心があった。学部時代より、大学の長期休みを利用して、旧アフリカ人居住区(タウンシップ)、特にその中でも貧困地区を中心に滞在し、フィールドワークを行ってきた。今回の派遣先であるフリーステイト大学は、私が2009年よりフィールドワークを行ってきた地域に位置する。1年という長期間滞在することで、2~3か月の短期では見えてこない人びとの様相が垣間見られるのではないかと、今回の派遣はとても楽しみであった。

 今回の派遣における目的は三つあった。まず一つ目は、アパルトヘイト体制下の1970年代、フリーステイト州タバ・ンチュで起こった「民族対立」に関する博士論文の執筆である。自分の研究だけに専念する時間を与えていただけ、集中して取り組むことができた。また論文テーマの舞台となった地域での滞在であったため、書き進める中で資料が足りないと思われる場合、すぐに調査に行くことができた。二つ目の目的は、南部アフリカ社会について調査する現地の研究者とのネットワークづくりである。フリーステイト大学では、私の論文テーマについて、フリーステイト州出身の研究者と議論することができたことが大変有意義であった。学会にも二度出席し、南部アフリカの各大学の研究者と知り合うことができ、問題意識を深めることができた。そして最後の目的は、これまでの調査で目を向けてこなかった南アフリカ社会の側面への知見を深めることである。これは博士論文に直接結びつくことではないが、一つの貧困地域に長期滞在し調査をしてきた私にとって、博士論文での議論を現代の南アフリカ社会の中に位置付け、その意義を考えるために大変重要なことであった。特に、都市部に住むアフリカ人中間層との交流、他地域へのフィールドトリップは、これまでの調査対象を相対化するという意味で、博士論文完成前に経験でき、とてもよかったと考える。またフリーステイト大学へ周辺諸国から来ている留学生や研究者との交流によって、南部アフリカ地域における南アフリカの位置づけを考えるためのきっかけも持つことができた。

 最後の点に関して、本プロジェクトの一年間の集大成として行われたワークショップ ’Perspectives on African Peace and Security’と、ジンバブウェへのフィールド調査は大変実りの多いものであった。ワークショップでは、本プロジェクトに関わる南部アフリカ各地からの研究者が集まり、様々な視点からアフリカにおける平和や安全保障についての議論がなされた。私が関心を持つ「民族対立」あるいは独立後のネイションビルディングに関する問題を、より広い文脈で考えることができた。またジンバブウェでは、ジンバブウェ大学の研究者との意見交換、タウンシップ在住者との交流の中で、南部アフリカにおける民族問題の共通性と南アフリカの抱える特殊性について、より知見を深めることができた。

 一年という長期間、現地に滞在したことは初めてであったが、そのおかげで研究者・調査対象者含めた地域の様々な人びととじっくりと付き合うことができたことが、自分にとって最も実のある経験であったと思う。地域の人びとに寄り添った視点を深め、同時に外部者だから持てる視点を忘れず、南部アフリカ社会が抱える課題について研究を続けていきたいと思っている。滞在の中で学んだ様々な事柄は、博士論文へ向けた問題意識を深めただけでなく、私自身の研究者としての視野を広げてくれた。ここで学んだことを土台に、今後も研究に精進していきたい。

 

 

 

 

 

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ソト人のロイヤル・ファミリー、クイーン、調査協力者のThekisoe教授夫妻との集合写真。クワクワにて。

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ソト人のロイヤル・ファミリーとともに、大学の記念講演へ参加。クワクワにて。

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ジンバブウェの主食サザ作りに挑戦。ハラレ、チトゥングウィザにて。

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ソト人のロイヤル・ファミリー、クイーン、調査協力者のThekisoe教授夫妻との集合写真。クワクワにて。

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<学会・研究会報告リスト>

Sayaka Kono, ‘Apartheid, Bantustan Elites and Ethnicity: A Case study of “Solidarity as Basotho”’, The seminar held at the Department of Political Studies and Governance, the University of the Free State, South Africa, 23 May 2014.

Sayaka Kono, “’Divide and Rule’ or ‘Self-determination’?: The Process of Fostering ‘Basotho-ness’ in Qwaqwa Legislative Assembly in the late 1970s”, The Biennial Conference of the Historical Association of South Africa, Blue Waters Hotel, South Africa, 29 June 2014.

Sayaka Kono, “Mechanism of Becoming ‘Ethnic’ in Bantustan:‘Illigal’ Squatters in Thaba Nchu and Their Daily Struggle for Survival, 1970s” The Annual Conference of the Oral History Association of South Africa, Ceder Park Hotel, South Africa, 16 October 2014.

Sayaka Kono, ‘Developent of Sesotho Ethnicity: Implication to South African Nation-building’, The Workshop ‘Perspectives on African Peace and Security’,  the University of the Free State, South Africa, 12 February 2015.

Sayaka Kono, ‘Being Inclusive to Survive and “Ethnic Conflict”: The Meaning of “Basotho” for Illegal Squatters in Thaba Nchu, 1970s’, The seminar held at the Department of Economic History, the University of Zimbabwe, Zimbabwe, 19 March 2015.

 

 

<論文リスト>

Sayaka Kono, ‘Being Inclusive to Survive in an Ethnic Conflict : Meaning of “Basotho” for Illegal Squatters in Thaba Nchu, 1970s’, Southern African Peace and Security Studies Vol. 3 No. 1, 27-43.